We are called "Taurin 1000mg theater". Now we have "Taurin 20XX Project".
タウリン20XXは栃木県宇都宮市の劇団です。楽しい演劇、面白い芝居をお届けします。

ヘレン・ケラー2019、終演となりました!

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いやあ、どんなことでも終わりは来るものですねえ。

奇跡の人、大阪公演が終わり、そして1週間後、オトスクホールでの宇都宮本公演が終わった。
まだまだ先のことだと思っていたのに・・。

それにしても・・・
色々な個性を持った人が集まり、一つの目標に向かってエネルギーが渦巻く、あの感じ。舞台が始まる直前の緊張感。
そして芝居が始まり、初日はどうしてもあまりウケなかったりする。でも、それでやっとそのお芝居が見えてきて、その次から一つのまとまりとして息づき始めたりする。そう、あたかも一つの命のように。
・・・色々なイベントの中でも、やっぱり芝居は特殊だなと思う。

そして、芝居が終わってしまうと・・・昨日まであんなに意味を持っていた物たちが、もう今日は存在価値がなくなる。もう、笑っちゃうくらいに。

衣装、小道具、舞台で使ったベビーベッド、自作の照明装置、そして・・・今回結構頑張って編集した脚本。残酷なくらいに物には意味がなくなる。「ヘレン、物には名前があるのよ。でももう意味はないの」って感じ。
芝居をやる人は必ずこの諸行無常を体験することになるはず。


今回の特殊性は、なんと言っても宇都宮での本公演の1週間前に大阪堺市で公演を行ったことだ。
NPO法人ヘレンケラー自立支援センターすまいる(以下"すまいる"と略させていただく)さんの招きで、すまいるさんの主催するイベントに招かれる事になったのだった。
大阪公演は一回きりの公演でしかも45分間の短縮版。キャストは私にタウリン20XXのちひろ、綾さん、君江さん、ゆかりさんの5人、それに音響の斎藤氏を入れた6人で大阪に乗り込むことになった。

朝8:20に宇都宮駅に集合し、9:00ちょっとの新幹線に乗り、6時間近くかかってようやく会場へ。
会場のビッグアイホールがある泉ヶ丘駅は、新大阪から乗り換えの時間を入れると1時間かかるのだ。

衣装小道具詰め込んだスーツケースを持って、やっとたどり着き、ホテルで荷物をおろしてホッとしたのもつかの間。それからビッグアイホールの舞台へ。

私的にはしま工の公演での栃木会館大ホール以来(一体いつの話だ!)何十年ぶりの広い舞台だということで不安はあったが、通常だと幅があり奥行きも広い(文化センター大ホールくらいか)ビッグアイホールの舞台は、通常の舞台前面から4m後ろの位置にスクリーンが設置され、そこに弱視の人のために舞台上でのアップの映像が映ることになる。舞台の奥行きが狭くなった分、せり出し舞台が前に5mくらい出ている。舞台全体も客席床から30㎝くらいとかなり低くしてあるレイアウトであった。そのせいか客席との一体感が増し、舞台が大きい事による不安は全く感じなかった。・・というより、こんな素晴らしいホールで演じられる喜びの方が勝っていたかも知れない。

さて、5時頃から仕込みやら照明・音響合わせやらリハーサルをやり・・・ホールを9時に出たときには旅の疲れも相まってもうヘトヘト。右脳も左脳も身体もすべて使い切った感じ。
かなりの昔の事だが、しま工の公演後にトラックを運転して、4階までの階段を何度か上り降りして書き割りなどを片付けして、やっと打ち上げ会場に着いた、それと同程度のヘトヘト具合。何十年ぶりの疲れ方。残っているのは明日へのやる気だけ。

そして、その次の日がビッグアイホール本番。・・・出来としては、客観的に見てもまあ良かった、と言えるのではないか。45分間の短い芝居と言うこともあって、前日に通しリハをしっかりやれたことがうまくいった要因だと思う。
久々の舞台であるケート(綾さん)も全くの初舞台のエヴ伯母(君江さん)もここに来て初めて役になれた、と言えるかもしれない。自分自身、アーサー・ケラーとして言葉を発することができるようになってきたのであった。そして主役の二人、ちひろ演じるサリヴァン先生とゆかりさん演じるヘレンは今までで最高の演技であった。

そうそう、忘れていけないのは声の出演だ。出演者が限られている大阪公演では冒頭場面に登場する医者と、パーキンス盲学校の場面で登場するアナグノス校長を声のみの出演(録音)で行った。

舞台初挑戦だったわたるくん演じる医師の声は芝居冒頭で出てくるのだが、言葉も明瞭で、若い医師らしい感じが出ていた。

そして、アナグノス校長の声をやってくれたしのぶちゃん。オトスク版では(もちろん原作もだが)パーキンス盲学校内でのアニー・サリヴァンとアナグノス校長との会話の場面になるのだが、時間短縮と出演者削減のため、ケラー家へ向かう列車の車内で、アニーがアナグノス校長の言葉を思い出している、という設定にした。

そして、このアナグノス校長の声をやってくれたしのぶちゃん。朗読劇をやっている彼女の、まるでプロの声優さんが演じているかのような素晴らしい声の演技により、第3場からの場面が方向づけられ、「奇跡の人」の話が動き出すのであった。
アナグノスが男ではなく女校長となったのは劇団の内部事情によるものではあるが、結果として、単に短縮しただけではない内容の濃い芝居に仕上げることが出来た。

そんなわけで、NPO法人ヘレンケラー自立支援センターすまいるさんに、我々を呼んで失敗だったと思われないだけのクオリティは確保できただろうか。
会場には目や耳がご不自由な方々、それからヘレン・ケラーのように両方ともご不自由が方々が多数来ておられた。そのようなお客様にはすまいるさんのスタッフさんが文字通り指文字で舞台の様子を伝えるのだ。

一体どのくらい伝わったのだろうか?私には今持って謎である。・・後ですまいるさんの打ち上げに参加したゆかりさんに拠れば、皆さん大変感動なさっていた、ということではあったが・・。

さてビックアイホールでの本番が終わり、次の日は月曜日、仕事が待っている。そこから私は重すぎる荷物を抱え、通天閣も太陽の塔も見ることもなく、新大阪駅では大混雑のためろくな土産も買えず宇都宮への帰路に着いたのであった。

ヘレンケラーその6後編へつづく)