We are called "Taurin 1000mg theater". Now we have "Taurin 20XX Project".
タウリン20XXは栃木県宇都宮市の劇団です。楽しい演劇、面白い芝居をお届けします。

3回目はヘレンさんのために

「ヘレンケラー」のお芝居、今回で3回め。
 
初めての「ヘレンケラー」は一度きりだと思っていた。
見に来てくれる子供達のため。
ただ、とにかく私の関われる時間がなくて、やるべき事は怒涛の様にあって、時は嵐のように通り過ぎていった。
 
しかしまあ、その二十日後くらいに「あのこと」が起こったのだ。
もしもあと日取りを一ヶ月ずらしていたらあの公演はあり得なかった、と言っていい。
 
2回目は同じ2011年11月。
まあ、あんな事もあったし、少しでも自分に何かできればなどという想いもあった。被災地に行ったわけじゃないけど。第一回目よりは少しは練習する時間があったので芝居としての面白さを追求出来るようになってきた。時間は実質40分と短い芝居ではあったが、東京の舞台女優さん、鈴井永遠ちゃんにも刺激され、役者としての勘も取り戻してきた。
 
やっていく中で、いつも思っていたのは芝居は楽しくなきゃいけない、っていう実に当たり前な事。
 
そして・・今回が第3回目。 場所は前回と同じ、簗瀬コミュニティセンター。
今回も製作段階では色々な難所があり、大変だった。しかし、終わってみればこの時点での納得のいく完成度の芝居が出来た。
 
heren-photo-no3-1b.jpg(43741 byte) 去年はブルーシートの上だったけど、今回はパンチカーペットですよ!
 
さて、芝居で使う小道具(ヘレンが使う人形)がないかと実家を家捜ししていたら、小学校の時に親が買い与えたと思われる「ヘレンケラー」の伝記が出てきた。まるで私の来るのを待っていたかのように、古い本棚の目立つ場所にそれはあった。小学生の頃は「怪人二十面相」「怪盗ルパン」などに夢中で、多分私はこの本は読んでいなかったと思う。
 
改めて、というより初めてこの本を読んでみると、子供のために書かれた本だが、ヘレンケラーさんの人生がよく分かるのだ。 幼少時代の記述は、劇のためにとても参考になったが、大人になってから、彼女が原爆投下の日本の惨状を知って、アメリカはなんて罪深い事をしたのだ…と悔いる所が目を引く。
 
ヘレンさんは、あんなに優しかった日本人が戦争を引き起こすなんて信じられないと思ったそうである。
 
ヘレンさん、あなたは正しい。
 
ヘレンさんは日本人の優しさを肌で感じていたのだ。
 
では、日本を愛し、日本のために尽くしてくれたあなたのためにも今回はできる限りの事をさせていただこうではないか。
 
・・という思いで、今回の芝居をやりました。
 
ヘレン役を東京在住の実力派の女優さんである相沢美穂さんに演じていただけるということになって、アニーがヘレンに食事のマナーを体を張って教える場面を、今回は原作にほぼ近いロングバージョンとした。
 
劇全体の構成は去年と同じだが、セリフを大幅に見直し、原作の面白さを短い中で最大限に生かせるよう心掛けた。
 
全員集まって練習出来る回数は少なかったが、本番では思い描いていた芝居にやっとこぎつけた感じ。
 
ギャグがやっとウケた!何がうれしいって笑いを取るのが役者としては一番嬉しいのだ。 かなり無理矢理入れたフーテンの寅さんのギャグも(今回はフルバージョン)うけてくれたー。良かったー。
 
なにしろ「面白くて笑えるヘレンケラー」を目指していたからねえ。その点ではまだまだ笑いを取れるところはいっぱいある。ギャグなんて笑いのほんの一部分にすぎないし。
 
とはいえ、芝居の「生きた時間を作る」って事が今まででは一番出来たかな。
でも一方ではこれが本当のお客様のための芝居の第一歩を踏み出したあたりなのではとも感じている。
 
相沢美穂さんが参加してくれるとなってから実際のところ演出としてのモチベーションはかなり上がりましたね。
 
heren-photo-no3-1a.jpg(43699 byte) 女優、相沢美穂さん。やる気のかたまりのような女性。
 
美穂さん、パンチカーペットの上で膝すりむきながらの素晴らしい演技、ホントお疲れ様。 あなたの演技は見ていてとても楽しかったですよ。
 
ヘレンは素晴らしかったけど、こうなると相沢美穂さん演じるアニー・サリヴァンも一度見てみたい気がする。年齢的にも役に近いし。
 
もちろん、今回の芝居、ヘレンだけではない。
 
ヘレンの母親ケートを演じたあやさんは去年とは格段の進歩を見せた。実を言うとリハーサルまで不安はあったのだが、本番では人が変わったような堂々たる演技を見せてくれたのだ。そこにはあやさんでしか演じられない、ヘレンの優しい母がいた。この人、本番に強いタイプかも。
 
三度目のアニー、るあさんも相沢さんにかなりいい影響を受けたようで、流れに乗って演じることが出来ていた。彼女も今までで最高の演技だったのではないだろうか。
 
去年に引き続きエブ役ののぶ子さんは仕事のスケジュールの関係で練習になかなか参加できない日々が続いた。去年と違う環境に悩む日々もあったという。でも、最後には良い流れにうまく乗れて、公演成功の一因となってくれた。
 
それに、今回の成功は素晴らしい効果さん抜きでは語る事は出来ない。・・・きっかけ合わせをやりながら、効果のタイミングや音の出し方によってこうも舞台の雰囲気は魔法のように変わるものかと実感した。か細い腕であの重い機材を運び、最高の音を出してくれたさほりさんたちにも感謝です。
 
youtubeにもアップしていただきました!ありがとうございます!
 
http://www.youtube.com/watch?v=_htsdkApNVk
 
さてお次は県内某所の施設での公演。 「ヘレンケラー」もおそらく次回で最後になる。
ふー、やっと終わりか、という想いと、 三度もやったこの芝居に対する愛着が交錯する。
 
とにかく、最後にふさわしい舞台にしたいものだ。