We are called "Taurin 1000mg theater". Now we have "Taurin 20XX Project".
タウリン20XXは栃木県宇都宮市の劇団です。楽しい演劇、面白い芝居をお届けします。
  

The Last Helen Keller?

県内某所のとある障害者施設からも是非うちでヘレンケラーのお芝居をやってくれとの依頼をうけていた。

そこでの公演は簗コミ公演より約1ヶ月後だった。

今回はMiwa ちゃんがヘレン役。

小学6年生。

randoseru_image.jpg(6244 byte)

私の子どもと同じくらいではないか?
 
ヘレンの役は難しいからねえ…何しろ(役者として実際にはまわりが見えているのに)見えない&聞こえない演技をしなければならない。
 
ヘレンの役作りに関しては、一回目は全く時間が無くてAyakaちゃんにお任せだったのと、二回目はこれまた素晴らしい舞台女優である鈴井永遠さんにお任せだったので、今まで私自身がまともに取り組む事はなかったのだ。三代目ヘレンの相沢美穂さんも同様である。
 
ただ、今回はなんと言っても小学生。本格的な役作りの経験のまだ浅いMiwaちゃんに、私が役作りの方法を提示してあげなければならなかろう。
 

で、今までお任せだったヘレンの役作りについて今回初めて考えてみた。
 
まず、自分がもし目が見えない、耳が聞こえないのだとしたら、嗅覚の他には、この指先で回りの状況を認識するしかないだろう。
 

heren_ido_01.jpg(11366 byte)
この井戸はヘレンさんちの例の井戸。
本題とは直接関係ないですが・・

例えば、私がこうして椅子に座っていたとして、何気なく目の前に机があるわけだが、それをどうやって認識するのだろう?ヘレン役は目をつぶらずにやるわけだから基本的に目を開けたままやってみることにする。
 
『・・・手を上げると何かに当たる・・・それは何だかわからない固いもの・・・それが「机」のような形の物体であると認識するためには、指先で全部たどってゆくしか無い。机の両端までたどって、初めて「机の平面」がわかる・・・形をたどるうちに下に出ているものがある・・机の脚・・・4本あり、それは地面につながっている・・・』
 
目の前にあるのが机のような形・大きさと触感を持った物体であると「感覚」で認識するために、以上のようなプロセスを踏まなければならない・・・
 
しかもヘレンは「言葉」がわからないので、あくまで「感覚」でとらえるしかないのだ。
 
しかし、である。これはもしかしたら五感の訓練で一番最初にやる「目の前にコーヒーがあります。それを飲んで下さい」というのと基本的に変わらないのではないか、ということにも気づいた。
 
わざわざ見える物を見えないと思い込む演技をするのではなく、「指先で人や物を常に認識しようとしている」演技をすればいいのだ、きっと。 そう考えた。これなら、いけるはず。そして(現実の)目を開けたままでも自由に演技することが可能となる。
 
ただ、これはかなりの集中力もいる。セリフのある役者みたいに、たとえ集中が切れても(ほんとは切れちゃまずいんだが)立ってるだけでごまかす事が出来ない。 アマチュアにはハードルの高い役どころである。
 
しかし、Miwaちゃんはやってくれた。
役者として素晴らしい進化を遂げたのだ。
元々五感の訓練でも光るモノを持っていたから、出来るとは思っていたけど。
小さな身体から繰り出される、大きくてわかりやすい演技。表情もはっきりしていて舞台に向いている。 身体の大きさからいっても、ヘレン役にぴったりなのだ。
 
当日は一時的ではあるが雪が降ったりした。
私も前日から風邪を引き熱に浮かされる始末。
皆の衆、実に申し訳ない。
当日も熱があったが、何とかやりきった。
これがおそらく最後のアーサーケラーだからと思って・・。
 
heren-photo-no4-1a.jpg(37222 byte)
 
風邪ウイルスにやられていると、当然頭脳の働きも悪くなる。だが発熱のため脚本を直前に見直すことさえままならなかったのだ。 というわけでセリフだけは飛ばないよう気を付けた。
 
まあ全体としての出来は簗コミを越えるとまではいかなかったかも知れない。流れが前回よりは良いとは言えない部分があったからだ。これは勿論ウイルスに負けた私の責任でもある。
 
しかし、それを差し引いても小さな身体で舞台を飛び跳ねるMiwaちゃん演ずるヘレンは相当魅力的であったはず。(会場では出演していない時はドアの外からこっそりのぞく事しか出来なかったもので・・)
 
サリヴァン先生の沢井るあも女優相沢美穂さんとの練習を通して鍛えられただけあって、動き、セリフとも簗コミレベルから落ちていなかった。
 
そう、Miwaちゃんバージョンヘレンケラーは成功!だったのだ。
 
のぶ子さんも仕事場から駆けつけ、何とか開演に間に合った。衣装に着替えて現れるのがびっくりするくらい早かった。そう、今思えば彼女の気合いもきっとこの芝居を押し上げていた。彼女は簗コミよりもいい出来だった。
 
施設の方々もこの芝居をたいそう喜んでいただけたようだ。心のこもった贈り物、ありがとうございました。  
ところでヘレン役のMiwaちゃん、今度はセリフのある役も見てみたいものだ。 いずれにしても大きな可能性を感じる女優さんになってくれました。

 
heren-photo-no4-1b.jpg(49443 byte)
 
追記
 
Miwaちゃん版ヘレンケラーのビデオが届いた。
それを見たら、Miwaちゃんヘレンは予想以上に素晴らしかった!
 
練習終盤辺りで笑いを取れるレベルまで来ていたが、本番はさらに一段上を行っていた。
そこには間違いなく、もう一人の新しい、そして可愛らしいヘレンが生き生きと躍動していた。
 
もう、他の調子の悪い人など気にならないくらい、輝きにあふれていた。 こりゃ施設のみなさんも感動するはずだ。
 
そう、前言撤回!
これは「成功」ではなく、間違いなく「大成功」!!
 
これは後で彼女に聞いたことだが、練習を一緒にやっていた相沢美穂さんにも良い意味でかなり刺激を受けていたようである。 うーん、プラスエネルギーって周りにプラスを与えるなあ・・・
 
改めて美穂さんに感謝である。
 
さて、タウリンがいよいよ再始動します。
 
すごく楽しみにしていて下さいね。
 
だけどもし、力になれることがあれば、アルフェージュもまたやりますよ!
何しろ最後のアーサー・ケラー役では役者としては悔いが残ったからねえ。
出来ればMiwaヘレンバージョンでパワーアップしてやりたい、と言う気持ちはある。
皆の衆、See you Again!